職場恋愛
「…ありがとうございます」

逢坂さんの底なしの優しさに声が震える。



コンコン

「おつかれーっす」


18時30分になったところで先輩社員たちが続々と休憩室に流れて来た。

「逢坂〜飲み行こーぜ」

私たちの3年先輩の沼田さんが逢坂さんに声をかける。
それに続いて4年先輩の秋本さんも逢坂さんを誘う。

「昨日も飲み会だったんでやめときますー」

「若いんだから付き合えよ!」
「先輩命令だぞ」

「結構ですー。寝たいんで」

強引な先輩方から逃げる逢坂さんだけど、先輩たちはそのやりとり自体が楽しそう。

「可愛い女の子誘うからさぁ〜」

「興味ないですー」

「逢坂いないとつまんないんだけど〜」

「俺がいたって変わんないっすよー」

「来てくれよ〜」

「ちょっとあんたたち、逢坂くん嫌だって言ってんだから帰してやんなさいよ。あんまりしつこいと嫌われるぞー」

あの人は確か秋本さんと同期の飯島さんだ。
美人で仕事ができる素晴らしい人。

「ちぇっ」

子どもっぽくいじけた沼田さんと秋本さんはのそのそとロッカーへ消えて行った。
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