職場恋愛
「俺、軽音部」

とつり目さん。


「バスケです」

と航。


「サッカー」

と山野さん。


「俺もー」

と島田さん。


「陸上部」

とりんちゃんさん。



そして、私は。

「テニス部でした」



みんな言い終えて、視線はなぜかつり目さんの方向へ。

みんなが見てるから私も見るけど、なんだろう、この沈黙。



「…………な、なんだよぉ」


つり目さんは耐えきれなくなって声をあげた。


「いや。すごいそれっぽいなーと思って」

「そうそう。どうせ弾けないのにカッコつけて弾ける風にしてたとかでしょ」


まず山野さんカップルがお互い頷きながら言った。
それもグサグサと刺さるようなことを…。


「髪長くして、ピアス開けて、ジャラジャラしてそう」

「分かる」


そして島田さんと航までグサグサと言葉を放つ。

まぁ…言われてみれば、想像できないこともないけど。


「なんだよ、みんなして。ジャラジャラしてなかったと言えば嘘になるし、弾けるかって言われたら弾けないけど、校内では1番人気だったんだからな。俺のバンド」


口を尖らせて訴える姿からは想像できません。なぜかって?
いたずらに失敗したキツネみたいで可愛いからです。
口が裂けても絶対に言ってはいけないことだけどね。


「ちなみに何やってたの?ギター?」

「それ以外似合わないだろ」


山野さんカップルに聞かれて小さく頷いたつり目さん。


「似合わないって言うじゃん。俺本当はベースやりたかったんだよ」


「一緒じゃん」

「変わんねーよ」


これ、バンドやってる人とかが聞いたら怒られるやつ。

ベースは音がすごく心地いいんだよね、私は知ってますよ!!


「もういいよ!俺の話は!もう10年以上前の話だから!!」


拗ねた。完全に拗ねた。
ドンマイです、つり目さん。
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