職場恋愛
side 航



「俺、まじで優しいと思う」


島田が部屋に戻って開口一番に山野さんに何かを自慢している。


「こうちゃんに?」


「そーう!」


俺の名前が出るとは思ってなくて少し驚いて自然と2人の方を見た。

島田が手にしているのはアイマスク。
蒸気が出るやつ。


「不眠じゃん?3日分持ってきた」


何気に栄養ドリンクとかくれるし、胃腸炎になった時には食べ物も飲み物もたくさんくれて、何かと気にかけてくれているらしい。


「しまはお節介焼かないイメージなのに」


タバコを吸いながら不思議そうな顔をする山野さんに同意だ。

面倒くさがりな島田だからそういうのはしない人だと思ってた。


「やっぱさー、楽しみたいじゃん?眠気に邪魔されるとか嫌じゃん?だからー、はい」


3日分のアイマスクを俺の手に握らせてニコニコしている。
その笑顔はどちらかというと若干ホラー。


「リーダーだからって媚び売ってんじゃねーの?」

山野さんの鋭いツッコミに感激してしまう。だってなんか怪しいよね。


「ねぇ俺ってそんなに性格悪いと思われてんの?媚び売るなら間違いなく逢坂ではなく安井さんを選ぶ」


性格悪いっていうか。裏がなさそうでありそうで分からないだけ。


「ありがと」


「いえいえー」


なんだかな。


「まっ、媚びるの嫌いだからしないけど」


「媚びるくらいなら自分が偉くなる」


「偉くはなりたくないなー。めんどくさいじゃん。ねー、リーダーってめんどくないの?」


「いや、やりやすい。判断間違えたりしたら厄介だけど」


「えー、俺絶対やだ。責任被りたくない」


山野さんにバリバリのタメ口で、すごいと素直に感心する。
本当に仲が良いんだと分かる。

友達っていうより、なんだろう。
家族とも少し違う。

なんか不思議な関係。
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