職場恋愛


「そう…ですね、強いて言うなら」


なんだその口調。
本当にやめろよ、ふざけたこと言って逆上させるなよ。


「お客様の前で人を怒鳴りつけたり」


おい、おい、おい、おい。
やめろって。


「クソ忙しい時でも関係なく、不必要にスタッフを事務所に呼びつけたりとか」


馬鹿じゃねーんだから。そんなこと言ったらどうなるかくらい分かるだろ!!


「マネージャーが売場に立たないのがいけないのでは?」










馬鹿だ。自分のとこのリーダーがこんな人だと分かっていれば、もう少し早く転職していたのに。
遅すぎた。


安井はもっと相手の顔色を伺って上手く立ち回れる人だと思っていたのに。
真逆のことしやがって。



「はっ。面白いことを言うな」



寺内の機嫌が悪くなったどころの話ではない。今にも人を殺しそうな目をしているじゃないか。



山野もいないし佐伯さんもいないここで暴力事件でも起きてみろ。
誰が止められる?

ふざけるのも大概にしろよ!
みんな我慢してるのに。なに自分だけ言いたいこと言ってんだよ。
ふざけんな!!


「こっちはなぁ、テメェが事務所でふんぞり返ってる間も汗水垂らして動いてんだよ!!切羽詰まってミスしたやつがいたら怒鳴るんじゃなくて、それをカバーするのが先だろ!んなことやってっから客が寄り付かねーんだろ!」


まるで山野みたいに口答えなんてして。
骨を折られても知らないぞ…!


「ま、ばっ…」


寺内が恐ろしい目つきで拳を振り上げたのを見て、つい声が出たけど。
目を伏せてしまって、その後に聞こえるであろう音が全く聞こえない。




ゆっくり目を開けて前を見ると、寺内の前に立っているのは。
多分誰も予想していなかったであろう人物。




「さすがに暴力は、ね?」
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