職場恋愛
side 航


病院から帰ってきてから何度吐いたか分からない。
水分補給しただけで気持ち悪いってどんだけ重症だよ。

胃腸炎は初めてじゃないけどここまで酷いものは初めてで、男の一人暮らしはキツイもんがあるなぁと感じていた。



眠いのに気持ち悪くて寝れない。
病院から出た薬を飲んでも結局出て来るし状態は絶望的。

朝から何にも食べてないせいで手が震える。
今何時だ。

携帯で確認すると17時過ぎ。
あと何時間耐えれば治るんだろうか。






気付いたら洗面所で寝ていた。
喉乾いたな。

冷蔵庫の中を見るとすっからかんで水すらなかった。

過去の自分恨むわ。
ストックしとけよ。

はぁ…。

相変わらず吐き気もあるし腹も痛い。
死んじまうよ。


ふいに携帯を開くと何件も着信やらLINEが入っていた。
國分さんとか島田、荒木さん、秋本さん、飯島さんからめっちゃ連絡が来てた。
全然気付かなかっだぞ、俺。

マナーモードにしてないし軽く意識飛んでたんじゃね?

こっわ。


とりあえず國分さんに電話。

『起きたか』

「電話気付かなくてすみません」

『体調は』

「あんまりよくないです」

いや、かなり悪いけど。

『明日また連絡する』

「はい。すみません」

機嫌直ったのかな。
普通だったな。



さて次は島田にかけよう。

『もしもし?生きてる?亡霊?』

「なんとか生きてるよ。島田、今どこにいる?」

『会社の最寄駅だけどなんかいる?』

「水を一本玄関にお供えしてほしいんだけど…」

『それだけでいいの?飯は?』

「多分吐くから水だけでいい」

『おー分かった。お供えしたらLINEするわ』

「ごめん、助かる」

『いいえ〜』

よかった……。
これでまだ少しは生き延びられる…。

荒木さんにも電話しなきゃな。
LINE知らないから…。


『もしもし!?逢坂さん!?大丈夫ですか?』

元気だなぁ。

「なんとか大丈夫だよ。荒木さんこそ、大丈夫だった?」

『また人の心配ですか?國分さんの機嫌がよかったっぽいので全然平気です』

よかった。
心の底から安心した。

「そっか。明日も出勤?」

『はい。逢坂さんはゆっくーり休んでくださいね。仕事のことなんて忘れて』

「うん、ありがとう。無理せず頑張ってね」

『頑張ります!おやすみなさい』


あとの2人はLINEで返そう。
正直喋るのもだるい。



約15分後島田からLINEが来たから玄関の外を見ると、ドアノブに大きなコンビニ袋がぶら下げられていた。

全然水だけじゃないぞ。
ありがとう島田…。
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