職場恋愛
事務所に入ると昨日いなかった今日の遅番組がたむろっていて、いつも通りの風景に安堵した。


「山ちゃんおつかれー!待ってたぞ!家電の手伝いで呼ばれるって相当じゃね!?」


俺の数少ない先輩にあたる角田(つのだ)、通称『つだ』が缶コーヒーを投げてくれた。


「あざす。リーダー兼任しようかな」


「店長でいいじゃん」


「それな」


つだちゃんが提案したジョークに自ら賛同すると笑いが起きた。


「山ちゃんお疲れ顔だね、早く帰んなー」


ほぼ同期に近い河野(こうの)、通称『かっぱ』に帰宅を促されて思い出した。


「高木ちゃん、どうせ明日も家電少ないだろうからシャワー室と仮眠室借りたいんだけど」


「車じゃないの?いいけど、ベッド固いよ」


ベッドの硬さくらい知ってるわ。


「車だけど帰るのだるい」


「はいどうぞ」


それぞれの鍵を受け取って制服のポケットにしまう。


「あと頭痛薬も」


「はい、水もね」


「はいどうも」


いい加減自分で買えってな。
頭痛薬と水だけでいくら貢いでもらってんだか。

つか、高木ちゃんは頭痛持ちじゃないんだから買わなくていいのに。なんなら俺の給料から引いてくれていいのに。
そういうとこあるからな。

本当はどっちなんだろうな。分からんなぁ。
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