職場恋愛




つり目さんの体力と私のやる気のなさと2人の高所恐怖症を考慮して下山中、さっき食べたおいりソフトのおいりだけを売っているのを見つけてついつい買ってしまった。


可愛いし、おいしいから。




「ゆーちゃん待って!早い!」


つり目さんに続いて普通の速さで階段を降りていたら後ろの方からりんちゃんさんの声が聞こえてきた。

登りはつり目さんが最後でりんちゃんさんが前だったのに、完全逆転してる。


「ほっとに、ほんっとに無理だから!高すぎだから!」


確かに高いですね、今にも落ちそうなほど。


「待ってぇ置いてかないでぇ」


泣きそうなくらい叫んでるから引き返そうとしたら…。




私の後ろにいた航が、信じがたい行動に出て思わず固まってしまった。


優しさなんだろうけどさ…。
偉そうなこと言えないけどさ…。
私の目の前でそれはやめてよ…。


「端っこの方だったら手すりもあるし段差が少しだけ低いんですよ」


って。りんちゃんさんの手を取ってエスコートしちゃって。

山野さんが見たらすっごい怒るんだからね、それ。


私も怒ってるけど。


自分も怖いくせに…!
もう!


「つり目さん!行きましょう!」


彼女の前で他の人にくっつくなんて!
もう知らない!



「えっ何、嫉妬?やきもち?ゆーちゃん可愛いとかあんじゃん」


ゲラゲラ笑っちゃって、もう!


「違います!」


違わないけど、いくら困ってるからと言って何のためらいもなく手を差し出しちゃうなんて。
そんな光景を静かに見守ってられる程美しい心は持ってないもん。


何もあんなにくっつかなくてもいいじゃん。



ズリッ


「あっ」


「わっちょっと、危ない危ない」



「あ、あ、ありがとう…ございます…」



めっちゃ高いのに転がり落ちるかと思った。

瞬時につり目さんが腕を引いてくれたから尻餅で済んだけど。





後ろを振り返っても航は気付いてすらいないみたいだった。
かなり離れているっていうのもあるけど、りんちゃんさんのことしか見てないみたい。


信じられない。
そんなにりんちゃんさんが好きならくっついちゃえばいいのに!!

山野さんとの三角関係なんて絶対勝てないよーーーだ!


いや、でも、、
航はすっごくすっごく優しくてかっこいいからりんちゃんさんが航を選ぶんじゃ…?

そしたら山野さんに勝ち目はない…。



もしそうなったら…どうしよう……。

私たち、ついにお別れの時が来たの!?


凶ってそういうこと!?
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