職場恋愛
side 航


気分はブルーなのにうどんはすごく美味しいなんて皮肉だなぁと思う。


「ゆーちゃんってすごくデリケートだよね」


向かいの席で既に食べ終えているりんちゃんが遠い目で呟いた。


「…そうですね」


「初めての喧嘩?」


今度は俺の目を見て聞いてきたけど、喧嘩…は初めてになるのかな。
いや、2回目?
結が家に帰らなかった時に揉めたあれは喧嘩に入るだろうか。


「多分違います」


「へぇ〜喧嘩したことあるんだ。こうちゃんって怒るの?」


怒るの?って、俺は仏様でも神様でもカカシでもないぞ…。


「前回は俺が怒って揉めました」


「え〜意外。なんでも許すイメージしかない」

「怒る時もありますよ」


若干苦笑いで答えるとりんちゃんも苦笑した。

「申し訳ないことしちゃったな。すっごくかわいくていい子なのに」


「いやいや。りんちゃんの気遣いを無視したの俺なんで」


「けど、結局転がったし。先に行ってたとしてもあたしが転がってるの見たら戻ってきてくれるでしょ」


転がったのだって俺が残るって言ったからなのに。


「乙女心は難しいです」


「なんでよ?こうちゃんモテモテなんだから女の扱い慣れてんじゃないの?」


なんかそれディスられてるのか褒められてるのか分かんないな。


「モテないですし不慣れです」


「やだー、それつり目とかミジンコの前で言わないでよ?こうちゃんは多分店の中で1番モテてるからー」


「それはないです。じゃ、謝りに行ってきますね」


俺がモテるとかなんの勘違い?
誰と間違えてるんだか…。


食べ終えた食器を返却カウンターに下げて店を出た。
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