職場恋愛

side 安井



山野が大抜擢された話はグループラインで聞いてたから一足先に知ってたけど。
これじゃ特別班の存在の意味がない。




「そ、れ、で〜。山野くんがいたら家電リーダーは2人もいらないから」


………降格…。
するとしたら、俺と逢坂どっちだ…？
俺なわけない…と自信を持って言えないのは…。




「家電リーダーは逢坂航くんに託すとして」



そんなあっさり。思わず乾いた笑いが出て、隣にいる青葉に心配の視線を送られてしまう始末。






「安井くんは特別班に異動かな。とりあえず明日から何日か特別で研修ね。あ、まだ確定じゃないから、いつ異動になってもいいようにだけ準備しといて」





…………………。



「リーダーは変わらず相田くんね」


…わざとか。変わらないなら言わなくていいだろ。
相田の下で働けと。


ほんと、ふざけんなよ。




「で、ね」


いちいち口が重たい。うぜぇ。



「ゲームコーナーのマネージャー、御影くんも特別として頑張ってもらって。そこの穴埋めにね」


40そこらのおっさんをよくもまぁ一般社員に落とそうと思えたな。
頭いかれてんじゃねーの。


特別はこっちより何割か高いけど、マネージャーなんかとは比べ物にならないのに。



「覚えてるでしょ？國分くん」





………………は？


それは聞いてない。
岩木と飯島はそれについてはなにも言ってなかった。



可もなく不可もない御影を降格させてまで戻したい人間なのか？
あいつだってあんな急にやめて急に戻ってくるなんて、ないだろ。



「これもまだ確定ではないんだ。あまりいい返事をもらえてなくてね」



当たり前だ。國分も馬鹿じゃない。
いや馬鹿だけど。
絶対戻ってこないだろ。

いや、戻ってこないでくれ。
頼むから。




「みんなには気を引き締めてもらわなきゃ、困るんだよね」


急に店長みたいな顔しやがって。



「一般でもちょこちょこ異動があるから、それは各部署で聞いてくれ。私はこれから会議なんだ。悪いね。今言ったのは明日からのものだからね。お疲れ様」



言い逃げかよ。
文句の一つくらい言わせろよ。