職場恋愛
想い
長く感じられた1時間が終わり、みんな揃って食事会のお店へ移動する。
そこは明らかに高級そうな料亭で社会人デビューしたての私にはとても場違いに思えて仕方なかった。
「お疲れのところお集まりいただきありがとうございます。食事会と言ってもそんな堅苦しいものではありませんので気楽に楽しんで行ってください」
私の店舗の最高責任者、福田さんの言葉で始まった食事会。
みんな揃ってのカンパイをして盛り上がる。
そんな中、私の隣は真鍋さん。
この際話しかけてみようかな。
せっかく同期なんだし。
「真鍋さんって、どうしてこの会社に入ったの?」
質問を考えたけど、なんか面接みたいになっちゃったな。
「あ、えっと。
私の家、みんな機械音痴で電子レンジとか、とにかく家電系が全部だめでね。老後とか大変だろうなーって思って、特にやりたいこともなかったから…流れでっていうか…」
へぇ。
意外とそんなもんなんだね。
「荒木さんは?」
「私?私は…ここ以外全部不採用だったの。最後の最後まで残ってたのがここしかなくて。だから家電とか訳分かんないしやっぱり苦手」
「そっかぁ。なんか、もっと早く話してたらよかったなぁ」
「え?」
「荒木さんって気が強そうで近付けない!って思ってたの。でも話してみたら全然普通だった」
私ってそんな印象持たれてたの!?
22年間生きて来て初めて言われたんだけど…!
「全然気強くなんかないよ。むしろお豆腐メンタルで毎日ズタボロ」
「冗談とか言うんだね、意外」
冗談じゃないし!!
いい感じにお酒が回って来た頃、
「逢坂そこどいて、あたしんとこ行って」
私の横にいた女の先輩が逢坂さんの席を横取りしに行って突然逢坂さんが横にくるという事件が発生してしまった。
あの本社事件から私はなんとなく逢坂さんを避けていた。
本社事件の時の私の思考回路が謎すぎて、これ以上頼ってはいけないと気付いたから。
「お邪魔しますね、お姉さん方」
私と真鍋さんに一言声をかけてそっと隣に腰を下ろした逢坂さん。
やっぱりイケメンなんだよな〜。
ってほら!この謎の思考回路。
「荒木さんって逢坂さんと仲良いよね」
こっそり耳元でそんなことを言ってくる真鍋さんに「ちょっと!」と怒ってしまった。
「よかった」
ほんのり顔が赤くなった逢坂さんが私を見てそんなことを言うものだから何のことかと首をかしげる。
「入社式の後のなんちゃら会で荒木さん、誰とも話してなかったでしょ。今回もそうだったらどうしようって思ってたんだよ」
「へっ!?」
逢坂さんってあの時どこに座ってたっけ…?
私の周りは同期ばっかりだったし、そんなに近くなかったはず…。
「見てたんですか!?」
「だって1人だけ何にも話してなかったんだもん。気になるでしょ〜」
よく見てらっしゃって、よく覚えてらっしゃる…。
「でも安心したよ。同期と話せるようになったみたいで」
本当に心の底から安心したような顔を見せるから、心臓がドキッとしてしまう。
だめだ…。
1ヶ月間必死に隠して来た想いが爆発してしまいそう。
自覚しちゃいけない。
自覚したら最後、止まらなくなる。
「逢坂さんって、彼女さんいるんですか?」
真鍋さんはあれから割とすぐに逢坂さんと普通に話せるようになっていた。
多分、逢坂さんの性格のおかげ。
「いないよ」
「どれくらいいないんですか?」
「さぁ…どうかな」
「じゃあ、好きなタイプは!」
「グイグイくるね。そうだな…頑張り屋さんかな」
私を挟んで恋バナを繰り広げる逢坂さんと真鍋さん。
そんな話されたら、本当に抑えが効かなくなる…。
「逢坂、顔真っ赤だぞ。夜風にでも当たってくれば?」
お酒も進んで本当にユデダコのように赤くなった逢坂さんは、先輩に言われて立ち上がった。
フラフラ歩いていく逢坂さんをなんだかほっとけなくて、ほぼ無意識について行ってしまった。
「涼しくて気持ちいいね〜」
私がついて行ったことに驚きもせず、風になびかれながらのほほんと笑っている逢坂さん。
だめだ。
もう自分に嘘はつけない。
「逢坂さん」
「ん?」
.
そこは明らかに高級そうな料亭で社会人デビューしたての私にはとても場違いに思えて仕方なかった。
「お疲れのところお集まりいただきありがとうございます。食事会と言ってもそんな堅苦しいものではありませんので気楽に楽しんで行ってください」
私の店舗の最高責任者、福田さんの言葉で始まった食事会。
みんな揃ってのカンパイをして盛り上がる。
そんな中、私の隣は真鍋さん。
この際話しかけてみようかな。
せっかく同期なんだし。
「真鍋さんって、どうしてこの会社に入ったの?」
質問を考えたけど、なんか面接みたいになっちゃったな。
「あ、えっと。
私の家、みんな機械音痴で電子レンジとか、とにかく家電系が全部だめでね。老後とか大変だろうなーって思って、特にやりたいこともなかったから…流れでっていうか…」
へぇ。
意外とそんなもんなんだね。
「荒木さんは?」
「私?私は…ここ以外全部不採用だったの。最後の最後まで残ってたのがここしかなくて。だから家電とか訳分かんないしやっぱり苦手」
「そっかぁ。なんか、もっと早く話してたらよかったなぁ」
「え?」
「荒木さんって気が強そうで近付けない!って思ってたの。でも話してみたら全然普通だった」
私ってそんな印象持たれてたの!?
22年間生きて来て初めて言われたんだけど…!
「全然気強くなんかないよ。むしろお豆腐メンタルで毎日ズタボロ」
「冗談とか言うんだね、意外」
冗談じゃないし!!
いい感じにお酒が回って来た頃、
「逢坂そこどいて、あたしんとこ行って」
私の横にいた女の先輩が逢坂さんの席を横取りしに行って突然逢坂さんが横にくるという事件が発生してしまった。
あの本社事件から私はなんとなく逢坂さんを避けていた。
本社事件の時の私の思考回路が謎すぎて、これ以上頼ってはいけないと気付いたから。
「お邪魔しますね、お姉さん方」
私と真鍋さんに一言声をかけてそっと隣に腰を下ろした逢坂さん。
やっぱりイケメンなんだよな〜。
ってほら!この謎の思考回路。
「荒木さんって逢坂さんと仲良いよね」
こっそり耳元でそんなことを言ってくる真鍋さんに「ちょっと!」と怒ってしまった。
「よかった」
ほんのり顔が赤くなった逢坂さんが私を見てそんなことを言うものだから何のことかと首をかしげる。
「入社式の後のなんちゃら会で荒木さん、誰とも話してなかったでしょ。今回もそうだったらどうしようって思ってたんだよ」
「へっ!?」
逢坂さんってあの時どこに座ってたっけ…?
私の周りは同期ばっかりだったし、そんなに近くなかったはず…。
「見てたんですか!?」
「だって1人だけ何にも話してなかったんだもん。気になるでしょ〜」
よく見てらっしゃって、よく覚えてらっしゃる…。
「でも安心したよ。同期と話せるようになったみたいで」
本当に心の底から安心したような顔を見せるから、心臓がドキッとしてしまう。
だめだ…。
1ヶ月間必死に隠して来た想いが爆発してしまいそう。
自覚しちゃいけない。
自覚したら最後、止まらなくなる。
「逢坂さんって、彼女さんいるんですか?」
真鍋さんはあれから割とすぐに逢坂さんと普通に話せるようになっていた。
多分、逢坂さんの性格のおかげ。
「いないよ」
「どれくらいいないんですか?」
「さぁ…どうかな」
「じゃあ、好きなタイプは!」
「グイグイくるね。そうだな…頑張り屋さんかな」
私を挟んで恋バナを繰り広げる逢坂さんと真鍋さん。
そんな話されたら、本当に抑えが効かなくなる…。
「逢坂、顔真っ赤だぞ。夜風にでも当たってくれば?」
お酒も進んで本当にユデダコのように赤くなった逢坂さんは、先輩に言われて立ち上がった。
フラフラ歩いていく逢坂さんをなんだかほっとけなくて、ほぼ無意識について行ってしまった。
「涼しくて気持ちいいね〜」
私がついて行ったことに驚きもせず、風になびかれながらのほほんと笑っている逢坂さん。
だめだ。
もう自分に嘘はつけない。
「逢坂さん」
「ん?」
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