職場恋愛
若干驚いた顔をした逢坂さんだけど、すぐに悲しそうな笑顔に変わった。

それで全てを察した私は、やっぱり伝えるべきではなかったと後悔した。


「…ごめんね。でもありがとう。めっちゃ嬉しい」


そういう思わせぶりなところも全部好き。


「なんで…ですか…」


困らせるだけだって分かってる。


優しいから突き放したりしないって分かるから、甘えてしまう。


「当分は彼女、作る気ないんだ。ごめんね」


勝手に勘違いしてフラれるなんてカッコ悪すぎ。

「……………」


気まずくてなにも言えない私に、小さく深呼吸した逢坂さん。

好きなのに、困らせてごめんなさい。


「俺、前の彼女に言われたんだよね。『今のあなたじゃ誰が隣にいても傷付けるだけだよ』って。それでフラれたんだけどさ。未練持ってる訳じゃないけど、妙に納得しちゃって。今までの彼女たち、みんな同じようなこと言って離れて行ったからさ。変わらないとだめだなって。でも何が原因か、まだ掴めてない状態だから…」



そんなの簡単だ。


この人の何がいけないって。


優しすぎるところだよ。


誰にでも優しくて妬かない女なんかいない。


自分が優しくされた後で誰かに優しくしてるのを見たら、ずるいって思うもん。

もっと私にも。って。



「逢坂さんって、なんで全員に優しいんですか?」

大分ヒントだけど、分かっちゃうかな?


「全員に優しいなんてことはないけど…。優しくしない理由がない人には優しくするようにしてるかな」

ほら、それだよ。
みんな平等だから、だめなんだよ。
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