職場恋愛
side 航

突然告白されて正直驚いたし、焦った。

好きになってもらうのは光栄なことで、とても嬉しいんだけど…。

歴代の彼女たちにフラれた理由が分からないうちに付き合ったらまた同じことを言われて、傷付けて終わるだろうから。

それが分かっていて付き合うなんて、俺にはできなかった。



でも………。
荒木さんに告白されたことは、実は、ここ最近の出来事の中で1番嬉しいことだった。


だって、俺のタイプのまんまの人だから。






「逢坂、ここにいたのか〜」

「なぁ島田」

「なんだ?」

「俺ってなんでいつもフラれるのかな」

「え、荒木ちゃんに告白したの?」

「いや、今は俺がフッちゃったんだけど」

「ええ!?」

「なんでかなぁ…。それが分かんないと付き合えないよ」

「……………」

「なに?」

じとーっと見つめてくる島田に嫌悪感丸出しで聞くと盛大にため息をつかれた。

「お前ってイケメンで優しくてモテモテだから完璧だと思ってたけど、大事なとこ抜けてるよな」

もしかして島田には分かったのか?

「穴だらけだけどなにが問題なの?」

「はぁあ…。プレイボーイの俺様が教えてやる」

プレイボーイだったのか、こいつ。

「お前はな、だっれにでも優しーーーい王子様だ。だから人気者だし頼りにされがち。
でもな?女ってのはめんどくさい生き物だから区別をほしがる。特別感。自分にだけ優しくしてくれて、自分にだけ見せる顔があって、自分だけの逢坂であってほしい生き物なんだよ。そりゃあお前のような王子様はモテるだろうけど、付き合ったところで長続きはしない」

それはつまり………?

「優しいのがよろしくないと?」

「うーーん。そういうわけじゃなくて、なんかもっと、差をつけてあげるべきなんだよ。例えば、今のお前は誰にでも優しすぎるから、他人には優しくする、彼女には優しすぎるくらいって差をつければ特別感が生まれる。分かる?」

分からない。難しすぎる。

「………謎」

「女って謎なんだよ」

そっか。

まぁ考えてみれば歴代の彼女たちが言っていた言葉はどれも『みんなに優しすぎる、特別感がない』という風に置き換えてもなんら違和感を感じない。

なんとなく、分かった気がする。



ただ優しくするだけだと、大切な人を傷付けることもあるんだね。


「キツイ言い方しちゃうと、お前はよく言えば優しい、悪く言えば八方美人だから」


うわ、………めっちゃ納得。


「あ、…………なるほど」


「今は運がいいけど、八方美人は嫌われるぞ〜」


八方美人……………。
なるほどね………。


1番しっくりくる俺の特徴だ。


「島田!ありがと!」
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