職場恋愛
元々割り振られていたエアコンフロアに行くと真っ先に岩木さんに怒られている結を見つけた。

どうしたんだろう。


「すいません、お兄さん」

「はい!」

結の方が気になるけど、今は仕事中。
お客様が優先。

呼ばれた方に振り返ると40代くらいのキツそうな女性がいた。

「こちらの責任者さんを呼んでいただけます?」

え……っと…?

「どうかされましたか?」

「どうかもなにも、ここの従業員の方たちみんな無愛想でやる気ないじゃない。気分悪いんだけど」


みんな…?


「大変申し訳ありませんでした」

「別にあなたに謝られたって何も感じないわよ。もっと偉い人呼んでちょうだい。こんな不快なお店初めてだわ。あったま来ちゃった」

誰だ…この人対応したの…。


「すみません。今すぐ呼びますので、少々お待ちください」

偉い人って店長代理だよな。
リーダー呼んだって同じこと言われるだろうし。

インカムで呼ぼうと思ったけど、確かインカム付けてなかったし、名前が分からないから呼びようがない。

事務所まで走るか…。






コンコン

「失礼します。すみません、責任者を呼べって言われたので対応をお願いしたいのですが」

さっき出たばかりの事務所に戻って店長代理にお願いする。


「内容は?」


「従業員の対応が悪かったみたいで、気分が悪いと…。かなり怒っていらっしゃって」


「めんどくせぇ」


「………」


「お前対応できるだろ。俺は忙しい」


………まじか。


「………頑張ってみます」


絶対無理………。
クレーム対応ほど苦手なものはない。





「お客様、大変申し訳ありません。責任者の方が席を外しておりまして、、…………」


「はぁ?呼んでくるって言ったから待ってたんだけど?」


そうなるわな。


「申し訳ありません」

「あなた名前は?」

「逢坂です」

「何年目?」

「2年目です」

「2年目の逢坂さんね、覚えたからね」

「はい…申し訳ありませんでした」


俺の名前を聞いて満足したのか、プンスカ怒りながら出口へと向かって行った女性客。

こんなに怒らせるって逆にすごいけど、誰が対応したんだか。


ふと視線を移すとまだ岩木さんに怒られている結の姿が見えた。

何をやらかしたんだ…。


ちょっとかわいそうだけど俺が出る幕じゃないから話は後で聞くとして。
お客さんが多いところに行こう。
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