職場恋愛
今日はきっと何をしても空回りだし、何を言っても怒らせるだけ。

明日きちんと謝ろう。
2ヶ月でクビなんて笑えない。

最低の最低だけど、半年は続けると決めている。

社員は3年続けないと信用を得られないというし。
逢坂先輩にだけは声をかけようかな。



レジに戻ってもそこには逢坂先輩の姿はなかった。
逢坂先輩も明日でいっか。


更衣室と繋がっている休憩室に入ると机に突っ伏した逢坂先輩がいた。
寝てる…?
なら尚更謝罪は明日にしよう。

休憩室の奥にある更衣室に入って制服を着替えた。
今日の出来事を振り返りながら問題点を探る。
私はどうしてお釣りを忘れたんだろう。
それでどうしてすぐに言わないんだろう。
うーーーん。
分からない。

問題点を探ることを諦めてロッカーを閉めて休憩室へ戻ると逢坂先輩は起きていた。

「あっ…あの…すいませんでした」

「ふぁあ…」

え?聞いてる?あくびしてるけど…。

「あの、逢坂先輩…迷惑かけてごめんなさい」

もう一回…言ってみた。

「……今日はまだよかった方だね」

…え?
どこが?

「お釣り渡し忘れちゃった人、わざわざ並び直してくれたんでしょ?
怒鳴り散らすでもなく、頭を下げた國分さんに当たるわけでもなく。むしろ『大丈夫です、ありがとうございました』って言って帰ってたからね」


あ…そうなんだ…。
強面の人だったし、威張っちゃったし、すごい怒ってると思ってた。

「まぁー。今はどんどんミスすればいいよ。新人じゃなくなってからミスしたら対処法が分からなくて後輩や周りの人を困らせることになるからね。後輩がいない今は先輩に甘えとけばいい。そうやって対処法を知っていくのも大事。その分自分の強みになる」

この人は本当に1歳しか変わらないんだろうか。

私のせいで予定狂っちゃったり仕事増えたりしてるのに、なんで怒らないんだろう。
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