ヘップバーンに捧ぐ
『少し、宜しいです?

お時間は取らせませんから』

暑さなんて、感じさせない涼やかな顔。
人を人として見てないような眼。
これからを暗示するかのような綺麗な黒髮。


今日は、なんでこうも付いていないのか。
朝の占いは、第1位だったのに………

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このところ、
専務の海外出張が多く、

私の平和なランチタイムが戻って来た。
それでも、翔駒さんからの
連絡は途絶えることはなかった。
むしろ、増えたように思う。
【何かあったら、
直ぐに連絡するように】
と必ずメッセージを添えて送られて来た。


今日こそは、お昼食べましょう!と
優彩ちゃんが
鼻息荒く誘ってくれた所に、
1通のメールが来た。



【咲良

日本は、まだまだ暑いんでしょうね

今、オーストラリアに居ます。
こっちは、冬で寒いです

早く、咲良の顔がみたい。

今年は、必ずお盆には帰るから
紗英の御墓参り行こう】

何を、白々しい。
何が私の顔がみたいだ。

あなた達の"今年は"は何年後のこと?

出来もしない約束を
毎年どうしてするの?

『先輩、どうかしました?

顔、怖いですよ?』

いっけない。
眉間のシワが、寄ってた。

「ごめん、ごめん!
ランチ行こう」

彼等達を、否定も肯定もしない。
ただの戸籍上の関係。

そこに、またメールが来た。
今度は、今度は翔駒さんからだった。

心が、軽くなった気がした。















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