ヘップバーンに捧ぐ
『先輩達、こっちこっちでーす!』
優彩ちゃんと蕎麦屋さんに向かうと、
既に、総務部のルカちゃんが
席を取っておいてくれた。
ルカちゃんは、優彩ちゃんの同期で
私の可愛い後輩の内の一人だ。
ここは、ランチタイムは必ず行列が出来る。
それも納得できるぐらい、美味しい蕎麦屋なのだ。
特に、海老天ぶっかけ蕎麦は別格の美味しさである。
翔駒さんが言っていた、
食べないと治らないの言葉が、響いたのか
あれから、毎日食べられる範疇で食べている。
そのおかげで、夏バテは
続行しているものの、気持ちはとても元気だ。
医食同源とはこのこと。
『そういえば、知ってます?
来週から、新しい営業の人来るの。』
新情報を提供しくれる、ルカちゃん。
「『知らなーい』」
目の前の、海老天ぶっかけ蕎麦に
首っ丈の優彩ちゃんと私。
情報は、金と同じと言うが
お腹は満たしてくれないのよ…
『もうふたりとも!
少しは、興味持ってくださいよ!
それでその人、
他社からの引き抜きなんですって。
九重部長が直々に、引っ張ってきたそうです。』
「『うっそー…』」
うわぁ、あの部長
正直苦手。
パワハラを愛し、パワハラに愛された
パワハラの権化が九重部長である。
自分の営業成績は、全然なのを棚に上げて
部下達をいびっていびり倒す。
そのくせ、上の人にはゴマをすりすり。
だけど、専務のことはきらっている。
いつも、専務に嫌味を言う常習犯である
相手にされてないけど………
とにかくそんな人が、
連れてくる人って、どんな人か知らないから
失礼を承知で言うが、
まともな人じゃないと思う。
嫌な予感がする。
気のせいであることを願おう。
何故か、嫌な予感程
当たるものなのだ。