ヘップバーンに捧ぐ
急いで、我が家に帰り
お風呂に入って、Skypeを開けた。

「もしもーし、楓さーん?」

『はいはーい!こちら現場の楓様です!
こちらの現在気温はですね………
わかりません!』

一人ノリツッコミ。
関西の醍醐味である。

「んで、どうそっち?順調?」

『いつもの如く、スルーありがとう!
うん、順調、順調!
神戸の営業所の改革も進んでるし
何より食べ物が美味しくてさ。
5キロも太ったよ!お腹ぱつんぱつん』

絶対嘘だ。
彼女は、
何食べても何時に食べても太らない
全世界の女の敵なのだから。
でも、冗談言えるぐらいなら
心配いらないはずだよね?

「それは何より。んで今日はどうしたの?」

『そうそう、それなんだけどね。
あんた昔、付き合った奴いたでしょう。
設楽 涼介。
あいつ、来週からうちの会社に来るんだって。
なんたって、ヘッドハンティングされたらしいよ
あの、九重に!絶対なんかあるね。
あんた、気をつけな!ねっ?』

「気をつけるも何も、もう昔のことじゃない。
忘れてたよ、そんな人。」

そう、今の今まで忘れてた元カレ、設楽 涼介。
楓には、一度会ってもらった。
楓は、なんかボロクソに酷評してたっけ。

大学でゼミの先輩だった。
しつこく付き纏われてて
気がついたら、
付き合ってることになってて
気がついたら、別れていた。

特に、思い出とかもなく。
何年付き合ってたのかも忘れた。
いつも自分が如何に凄いとか、
武勇伝を語ってたと思う。本当に記憶ない。

薄情者だと言われても良い。
それぐらい、覚えてない。

『それはそうなんだけどさ。
あいつ、東洞ホールディングスの社員でしょ?
しかも、九重も東洞什器からの出向で
ASAKURAに来たじゃ無い?

うちの専務とさ、東洞のお嬢様
婚約したからお盆開けたらすぐ、
東京で創立記念パーティあるじゃん
その時一緒に婚約パーティーも
するんでしょ?
とにかく、あいつ野心家だからさ
うちとこれからを見据えてとかで
なんか企んでると思うんだよね~な』

婚約パーティー?
婚約パーティー?
お盆開けてすぐ?

本決まりじゃん。
うっそー、お嬢様に大口たたいちゃったよ。
なんだ、ちゃんと婚約してんじゃん。
人に構ってる余裕ないじゃん。
何やってんの?

『咲良?聞こえてる?
マイクテスト。あー、マイクテスト。』

「うん、聞こえてるよ。
専務、婚約したんだ。知らなかった」


『うっそ!
そっちで話なってないなんて………

大阪じゃその話持ちきりだよ!
東洞の本社が、大阪なんだけど
そこでここ最近
よくうちの専務目撃されてるよ』


海外出張とは聞いてたけど
大阪とは言ってなかったと思う。

『もしかして、入籍迄まだ日があるし、
遊びたい盛りなんじゃない?

専務ぐらいのルックスなら
黙ってても、女から寄ってくるわね』

まぁね、私
専務とは何の関係もないし
知らなくて、当たり前よ

あまり靡かなかったから
躍起になってだだけなのだ。





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