ヘップバーンに捧ぐ
『美波!明日14時会議室入れといて!』

『美波先輩!ストッキング伝線しちゃいました…」

『美波さん!内線1番』

『美波先輩!…何だっけ?忘れましたテヘペロ!…』

『美波!…』
『美波ちゃん!…』
『美波さん!…』


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そう私の、朝は大体こんな感じ。

着席してコーヒーを
飲む間もない。
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「佐藤さん、会議室5取りました。」

「優彩ちゃん、ストッキング今日替えないの?これ、どうぞ。
あと、ストッキングは一晩
冷蔵庫で冷やすと伝線しにくいよ」

「おはようございます専務、
そのような要件でしたら、切ります」
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私の勤める、(株)ASAKURAは
創業70年の文房具メーカーである。
-人の想いが筆を伝って文字が綴られる-
それが、この会社のスローガンだ。

就職難の中
何とか、就職出来た、入社4年目の夏。
新人の顔も出来ない。
甘えたこと言っても、もう
許される年でもない。
言い訳しても、絶賛夏バテの私を
日々の仕事達は待ってくれない。

そんなの、当たり前。
だって社会人だもの。
当たり前に、仕事を行う。
それで、お給料を頂いてるんだから。

書類の誤字脱字、不備なし。
スケジューリング抜かりなし。
郵便物、備品も確認済み。
今日も朝から、業務は順調。

ただし、私の作った完璧な調和を壊す
ヤツの、電話さえなければ…


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