ヘップバーンに捧ぐ
紗英さんと咲良ちゃんの事を
一通り聞いた後、
お互いの仕事話など話は尽きず、
すっかり辺りが白み始めた。

『こんなに長く引き止めてしまってしまいすみません。

久しぶりに、楽しかったよ。
どうぞまた、遊びに来てくださいな』

挨拶を交わし、美波邸を後にした。

それから俺の日本の帰国までの間、
美波夫妻と連絡を取り合った。

そんな時、
フランスにいる五島山が独立し
日本でレストランを開きたいと相談を受けた。

経営は、相談にのれるが、
飲食店舗のレイアウトや外観は
全くの素人だ。
そこで、英介さんに連絡取った。

「英介さん、厚かましいのですが
ご相談にのっていただけないでしょうか?」

『水臭いとこ、言わないでくれ。
どうしたんだい?』

「友人が、レストランを開きたいようなんですか
その際の外観や、レイアウトなど
どう行ったものが好ましいのでしょうか?」

『そうだな。
レイアウトや外観も大事だが
"あかり"の取り方が大事になると思う。
照明は、涼子の方が詳しいから
涼子に話してみていいか?』

「はいっ!是非アドバイス頂ければ」

『その彼は、今見積もり段階かい?』

「いえ、五島山というやつなんですが
思いつきで行動するので、まだ何にも
準備してないと思います」

『だったら、直接彼に会わせてくれないか?
電話では、ディテールまでは伝わらないからね』

こうして、美波夫妻と俺と五島山とで
レストランの建設計画会議がフランスで
執り行なわれた。

流石は、プロだ。
五島山の漠然としたイメージ通りの
店の図案を作ってくださった。


その中でも最後まで揉めたのは、
以外にも店名だった。

『ぱっと、はっと、ぱらっと、キラーンみたいな
名前にしたいんだよね~

翔駒、なんか無い?
特別に決めさせてやるよ』

こいつ、偉そうに。
ゴツいてやった。
そんなの、痛く無いだろ?
けれど、
この間から1つ頭に浮かんでいるものがある
それは"ciliegia/チリエージャ"である。

ciliegia/チリエージャ
イタリア語で、桜という意味だ。

『いいねぇ~
それにすっか。はい決まりましたー』

美波夫妻は、びっくりして
固まっている。

娘の名前と同じ響きだからだ。
涼子さんは、目に涙を浮かべて
頷いている。

『とても良いと思うわ。ciliegio
ねぇ、あなた。』
『ああ、いい名前だ』

無事に、こうして店名も決まった。


そして、めでたく半年後
ciliegioは東京にオープンした。






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