ヘップバーンに捧ぐ
ciliegioがオープンから程なくして
会長から東京に戻ってくるように
正式な辞令が下った。

無心論者だか
美波夫妻と出会えたことに
心から、神に感謝した。

そうして、
NYを離れ東京の地を久しぶりに踏んだ。

両親への挨拶を済ませ
午後から、東京本社を覗いてみた。

そこで、再び神に感謝することになる。

ASAKURAの御曹司をいち早くみたいと
廊下に社員がひしめき合っている。

いろんな視線を感じる。
もう慣れたことだが、やはり疲れる。

終わったら、ciliegioに行って
酒を飲もう。
そう思っていた矢先、
1つの声が聞こえて来た。

『美波先輩~~
ここどうやったらいいですか?
すぐ、この数式はエラーですが出ます』

『見せてねー、なるほどね。
ここに、カーソルあわせて
If関数を使って検索条件を
名前ボックスから引っ張ってきたら
エラーにならないはず』

『えぃっと。
数値、出てきました~~
ありがとうございます~~!
ブラック◯ンダーお礼にお渡しします』

『◯い恋人味知ってる?
それがいいなぁ。
冗談だよ!そんな検索しなくていいよ!』


二人の女子社員がデスクに座り
面白い会話をしている。
ブラック◯ンダーって何だ?
後で、ググる。



まさか、ここで咲良ちゃんに、
会えるなんて思いもしなかった。
その日ほど、ASAKURAの人間で良かったと思った日はない。



やっと会えた。

こんなチャンスはまたと無い。

チャンスの前髪は
すぐ過ぎ去ってしまう。
だが、前髪は、俺が掴む。

幸いなことに、殆どの男子社員の
視線の先が咲良ちゃんに向かっていても
彼女は、気づいていない。

今後一切お前らの、出番はない。

何が何でも、彼女は俺が貰う。


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