ヘップバーンに捧ぐ
東京に戻ったと言っても、
遊んではいられない

出社してないだけで、仕事は山積みだ。
全ては、今夜のためだ。

本当は、お父さんもお母さんも大切なのに、
傷つくことを恐れてそれに蓋をして
距離を置こうとしている咲良ちゃん

本当は、娘の事を愛しているのに
構ってあげられなかった過去に
縛られ、身動きの取れない夫妻。

3人の長年のわだかまりを解決できるのは
今夜しかない。

本当は俺が、
咲良ちゃんを迎えに行く予定だったが
英介さんは、自分達が迎えに行くと言った。

俺はciliegiaで3人を待つ事にした。


橘を今日出社させた。
理由は、設楽が出社を早めたからだ。

こちらの思った通り、設楽は
咲良ちゃんに接触して来た。
しかも、そばにカメラマンまで用意して。

恐らく、その写真で咲良ちゃんを脅すためだろう

カメラマンは既に、橘がお役御免にしてしまった

設楽は、バッチリ自分が写っているものだと
キメ顔ばかりだ
恥知らずめ

橘が、背後から設楽を取り押さえようとした
けれどそれよりも、早く
美波夫妻が咲良ちゃんを助けた。

美波夫妻と咲良ちゃんは橘が側にいたことに
気がついてない

橘は、海外で特殊部隊にいた経験があり
どこにいても、自分の気配を消し
ターゲットに気づかれないまま、射程圏に
入り込むことができる

美波夫妻が現れて橘は、取り押さえる手を鎮め
物陰から、様子を伺った

設楽は、咲良ちゃんのことを諦めないと
最後言い残して、去って言った。

落ち着きを取り戻した咲良ちゃんは
英介さんの申し出を断って家に帰ろうとしていたが、英介さんの気迫に気圧されたのか
しぶしぶと言った感じだが、
夕食を共にする事に決めたようだ

そして、店の扉が開いた

覚悟を決めた、美波夫妻と
驚いている咲良ちゃんの顔があった

これで、説明は終わり
問題解決は、目の前だ

今日は、田野島たちのことは忘れて
家族を大切にする夜だ

咲良ちゃんは、わかってくれたよね?



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