ヘップバーンに捧ぐ
一瞬、張り詰めた空気になった。
話を聞く限り、一筋縄ではいかない人だろう。


『田野島会長は、8月19日の創立記念パーティで東洞を婚約者として紹介する予定らしい

俺の所には、話が来てないと言うことは
当日まで、
俺に知られないように動いてるんだろう

大阪で偽の麻倉翔駒と一緒に
この休み中に噂広いめるらしい
だから休み明けは、この話になるかもしれない

そこで、俺は一連の出来事の終止符を打とうと思う。もちろん、経済界の人間だからこちらも
遠慮してると部分はあった
だけど、それとこれとは話が違う

東京の経済界も、腹に据えかねていることもあって、その日に全て終わらせる』

私は、黙って聴いていた。
口を挟める部分はない。
ただ、雰囲気から事態は相当深刻なのだろう。

『いいか?咲良
何があっても、俺を信じてくれ
君を守る
奴らが接触して来ても、話に応じないでくれ
そしてすぐに俺に電話してくれ』

「はい。わかりました。
何があっても、翔駒さん信じます。」

私をじっと見て、抱きしめて来た翔駒さん
何か、不安な部分もあるんだろう
私も彼を抱きしめた。少し驚いていたけど
そんなの気にしない
ちょっとでも彼の不安が溶けますように
少しでも彼が安心できますように

ひとしきり抱きしめあった後
私の顔を覗き込んで、キスをした。

『咲良、愛してる』

決戦は1週間後といった所だ。
彼が、九重たちに傷つけられるのは
絶対嫌だ

「私も、微力かもしれないけど
翔駒さんを守らせてください。
何かできることがあるなら、
行ってください。」

『ありがとう』

暗い話はお終いと
誰にも邪魔されない恋人の甘い時間が
始まった。

この時だけは、二人の時間を楽しもう。


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