ヘップバーンに捧ぐ
休みが終わり、
明日からまたいつもの日常に戻る。

今年は、祝日とお盆がうまいこと繋がり
6連休だった。

2日働いたら、すぐに土日になるので
有給を取る人いるが、私は取らなかった。
だから明日からお仕事だ!
溜まったメールの量が恐ろしいのは毎年のこと。

けれど、翔駒さんは有給を取って欲しいらしい。
理由は、九重部長の関係者の接触を危惧しているからだそうだ。

しかし、私は断固として拒否した。
九重部長を恐れて、仮に有給を取ったら
こちらの負けを認めたことになる

卑怯なことをしている人に
ビクビクする必要はない、正々堂々といれば良い

心配そうな顔が取れない翔駒さんは
『咲良は、大切な家族なんだ
もし何かあったら、俺の心臓も一緒に止まるんだ
頼むから、九重達が接触して来ても
応じずに、すぐに連絡して来ること、
いいね?』と言って、渋々出勤を認めてくれた。

それからは、何気ない話をして
自宅まで送ってくれた。
別れ際にキスして別れたけど、
翔駒さんはまだ、
それでも心配なのだろう。
唇から伝わって来た。

「翔駒さんがそんなんなら、勝機逃すわよ!
ほらっ!ビシッといつものかっこいい姿に戻って、私は大丈夫。
また明日から、宜しくお願いしますね!専務
おやすみなさい」

『そうだな
弱気では、何も進まねえな
よしっ、元気でた!
明日からもよろしくな、奥さん!
おやすみ、いい夢みてな』

そう言って、翔駒さんはいつもの彼に戻っていた。大丈夫、大丈夫、大丈夫。
私も、元気よく家に入った。

翌朝、朝一番起き抜けに
翔駒さんは一緒に出社しようと連絡があり、
返事する間も無く
家の前に翔駒さんの愛車のブレーキ音がした。
まだ、パジャマのまんまだ。

『おはよう!ダーリン!
ごきげんいかが?』

「私電車通勤なんで、大丈夫だよ?
さすがに、電車では接触して来ないだろうし」

『わかってないね、咲良ちゃん
少しでも一緒にいたい男心察しなさいな』

「男心って!それ女の人のセリフじゃない?」

『細かい事は、気にすんな!なっ!
いつまでパジャマなの?襲っちゃうよ
早く着替えて!英介さんおはようございます」

朝から、縁起の悪いことを。
私が急い着替、用意している間
翔駒さんは両親と話をしていた。

私の準備が整ったところで、
みんなで朝ごはんを食べた。
いつもは、電車の時間と部屋の掃除、片付けの時間を気にしなきゃいけないので、ゆっくりごはん食べてる余裕は無いけど、
今日は翔駒さんの車に乗って出社は決まりだし
掃除は、お母さんがやってくれるそうなので
朝ごはんを楽しむことが出来た。

翔駒さんと一緒に出社しているところを
見られたら恥ずかしいので会社の手前で降ろしてもらうように頼んだけど、ダメだった。
がっつり、地下駐車場に止められてしまった。

案の定、皆に見られ、
やっとくっついた!と祝福する人
専務がだだ一人のものになってしまった。と
笑い泣きしてる人
いろんな人に冷やかされながら
何とか自分のデスクにたどり着いた。
だだ一人を除いて。

これは、翔駒さんの作戦だったと後から知ることになる。
大阪での噂のことを知ってる人もいたが
東京での専務と私のやり取りを見てるから
信じなかったらしい。

九重部長は、会社の空気が祝福ムードになっている事と、設楽が転職辞退したそうなので手先をなくした事もあり、手出し出来ないようだった。


木曜、金曜と東京の社員全員に守られながら
無事に過ごせた。
本当に、この会社に入社してよかった。

後は、明日のエセ婚約パーティーである。

これが何とかなれば、全ては解決するはず。

私ができる事は、
翔駒さんの無事を会場から
祈ることぐらいしかないけど、
せめて全身全霊で、祈ろうと思った。
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