バス、来たる。
到着したバス停には既に3人待っている人が居た。いつも同じ時間に乗るから、何となく知っている顔ぶれの3人。ちょっと頭の毛の具合が心配なおじさんと、ぽっちゃり系OLのお姉さん、そしてすらっと背の高い眼鏡のサラリーマンのお兄さん。
サラリーマンのお兄さんの隣に並んで、心の中でガッツポーズをした。チラリと横目で盗み見るその横顔は、相変わらず涼しげで、結構かっこいいと思う。雪が降りだしてバスの時間を早めたら、毎朝一緒になるようになったお兄さん。今では、学校の為と言うよりこの人の顔を見たいからこの時間のバスを選んでいると言っても過言じゃない。
さらりとした黒髪にちょっと雪が積もりつつある。いつもイヤホンをしているけど、何聴いてるのかな?Jポップ?洋楽?家で朝聞いてるようなラジオなんて聴かないんだろうなぁ。普通にかっこいいし、彼女居るよね。絶対。
声すら聴いたことのない人の事を、なんでこんなにも考えているんだろう。そう一瞬思ったけれど、別にいいの、見るだけだから……と自分を正当化してふぅっと息を吐く。小雪が舞う中を真っ白な私の吐息が立ち上っていった。