バス、来たる。
バスに揺られること30分とちょっと。いつもよりもかなり時間がかかって到着した学校の近くのバス停で、バスカードを通して運転手さんに五千円札を差し出しながら声をかける。
「すみません、三千円のバスカード下さい」
私の言葉に顔を向けた運転手のおじさんは、全く詫びれた様子もなく、むしろめんどくさそうに答えてきた。
「あー、おつり切れちゃったんだよね。千円札無いの?」
「……無い、です」
「小銭は?」
「無いです」
「五千円ならおつり要らないけど」
え? 五千円? それ買ったら、私所持金47円になっちゃうし。そしたら、帰りに温かい飲み物一つ買う事すら出来ないし……。誰か友達から借りたら大丈夫かな?
どうしよう、と頭をめぐらせていると左肩を軽く叩かれた。振り返ると、目の前に差し出されている千円札が1枚。