My hero is only you
「だから、ごめんってば。みんな今までどうもありがとう」

「これからもよろしく。でしょ?」

「え?今日限りで、お別れじゃないでしょう?私たちみんな、これからも友達なんだから」

「そうだね」

 友達はみんな私の気持ちなんて、すべてお見通しなんだろう。

 チャイムが鳴って、自分の席に戻った。

 簡単な朝礼が終わって、終業式のために、体育館に向かう。

(もしかしたら、あの人の姿を見かけるかもしれない)

 そんなことを期待して、みんなから少し離れて歩く。

 期待はまた、裏切られるかもしれないけれど。

「あっ」

 期待は裏切られなかったようだ。

 少し前を歩く後姿を見つけた。

 それに追いついて、笑顔で声を掛ける。

「おはようございます」

 答えを待たずに、横を通り抜けた。

 振り向くことはしない。

 それは自分とあの人のためにも。

 姿が見れてよかったと思った。

 この瞬間を最後に覚えておこうと思う。

 いい思い出として残るように。

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