My hero is only you
 あれから3ヶ月近く経った。

 あの日から毎日のように、放課後には図書室に行くようになった。

 挨拶から始まり、最近では普通に話す関係にはなっていた。

 図書室のドアの前で、一回大きく深呼吸をした。

 何度ここへ来ても、入る前はいつも緊張する。



 ドアを開けると、いつもの場所にあの人はいた。

 不自然にならないような足取りで、その席に近づく。

 その気配に気が付いて、顔が上げられる。

「こんにちは」

 笑みと共に視線が向けられた。

「・・・こんにちは」

 笑顔でこちらも返すつもりが、ちょっとぎこちなくなる。

 それはその笑顔と視線のせい?

「期末テストはどうだった?」

「聞かないで下さいよ。先輩みたいに頭よくないですもん」

「俺だって決していい方じゃないよ。ただ、もう3年だし、しっかり勉強しないといけないからね」

 机を見ると、大学受験のための参考書が広げられている。

「テストが終わっても、受験勉強をしなくちゃいけないし、夏休みには夏期講習もあるから。全然のんびりしていられないよ」

「そうですか。大変ですね」

 もっと別の言葉を返したいのに、頭に思いつかない。

「しょうがないよ。これは自分の夢に近づくためのことだからね」

 そう言って、再び参考書に視線を戻していく。
< 3 / 17 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop