My hero is only you
 その場を離れて、一番遠い席を選んで座る。

 カバンからノートと筆箱を取り出した。

 ノートを広げると、そこにあるのはいくつもの詩。

 最近のはずっとあの人に関するものばかりだ。

 すべてはこの図書室で始まったんだ。

 あの日、ここに来なければ、こんな風に見つめることもなかったんだよね。

 話をすることもなく、お互いに知らない人のまま。

 顔を上げると、見つめ続けてきた人が見える。

(今日限りで見納めになるかもしれない)

 出会ったあの日には思いもしなかったこと。

(このまま、時間が止まってしまえばいいのに)


時計の音だけが響く放課後の図書室

初めて会ったあの日のことを覚えている

そこだけが時間が止まっているような

あの瞬間を

こうして今もあなたを見つめている

あなたの瞳には誰が映っているの?

それを知るのが怖い


(そう、怖いんだ)

 鉛筆を持つ手が震えている。

 伝えると決心したのに、その気持ちが揺らいでいる。

 目を閉じれば、いつもの笑顔が浮かんでくる。

(大丈夫、大丈夫だよね)

 信じるしかないあの笑顔を。
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