だいじなもの。
1日沢山遊んで水着姿にも慣れたのか、あれからパーカーを羽織ることなく過ごした。
浮輪を返しに行って帰ってくると夕日に向かって波打ち際で立って黄昏ていた。
その後ろ姿を見て思わずカメラを手にする。
夢中でシャッターを押していると、気づいてこちらに戻ってきた。
「帰る?」
何食わぬ顔で問いかける。
「うん!今日はありがとう」
ニコッと笑った顔が愛おしくて奈緒を引き寄せた。
「ふふっ、どうしたの?」
水着姿で恥を捨てたのか、素直に背中に手を回してくれた。
「疲れたの?」
なんて可愛い質問なのだろうか。
「うん」
そうではないが、素直に抱き締めさせてくれるのなら嘘を吐こう。
「ねぇ、奈緒」
「ん?」
「周りから見たらバカップルだね」
「なっ!」
照れてしまって、離れようとする。
そんな姿も愛しく感じる。
そっか、奈緒のことが好きなんだ。
だから初対面なのに倒れている奈緒を見捨てられなくて介抱したり
その後気になって初めて奈緒を見つけた場所に行ってみたり
奈緒のことを色々気にかけるのはそういう理由なんだ。
なんだ、一目惚れだったんだ。
「そっかそっか」
自覚した気持ちが嬉しくて奈緒を抱きしめる力が強くなった。
「煌!?」
「ハハッ、帰ろうか」
奈緒の額にキスを落としてから解放した。
「もう!」
奈緒に呆れられても可愛くて仕方なかった。