極上初夜は夫婦のはじまり～独占欲強めな社長ととろ甘結婚いたします～

「樹里と一緒だったけど、樹里が飲ませたわけじゃないからね」

「わかってる。どうせ樹里の制止を無視して、和奏が勝手に飲んだんだろ」

　どこかで実際に見ていたのかと思うほど、涼我の想像は怖いくらいあたっている。
　私の性格も樹里の性格も、すべてお見通しなのだ。

「昨日、部長がどうとか言ってたけど、ヤケ酒か？」

　涼我が眉根を寄せ、心配そうに私の様子をうかがう。

「まぁね」

　ふと自分だけがコーヒーを飲んでいるのに気づき、空いているマグカップに涼我の分のコーヒーを注ごうと立ち上がる。
　コーヒーを淹れながらも、たまごサンドをもぐもぐと口の中に入れる私を、涼我は行儀が悪いと思って見ているのだろう。
　しかし朝は忙しいから、そんな視線は気づかなかったフリをした。

「働きにくいなら、会社を辞めたらどうだ？」

　コツン、とマグカップを涼我の目の前に置くと同時に、私は目を見開いた。
　昨夜のヤケ酒がひどかったのもあるけれど、涼我から会社を辞めろと助言されたのはこれが初めてだったから驚いた。