極上初夜は夫婦のはじまり～独占欲強めな社長ととろ甘結婚いたします～

「和奏さん、いらっしゃい」

　そう声をかけてくれるのは、ここのバイトの蘭々(らら)ちゃんで、女子大に通う、目がくりくりとした小柄のかわいらしい女の子。
　お店の紺色のエプロンがよく似合っていて、愛想もよく、今ではおじさんたちに絶大な人気の看板娘となっている。

　その蘭々ちゃんが「どうぞ」と案内してくれたのは、涼我の隣のカウンター席だった。
　私と涼我が友達だと知っているから、気を利かせてわざわざそうしてくれたのだろう。

「ありがとう」

　若干顔を引きつらせつつ、私は涼我の隣の椅子へ腰を下ろした。
　なぜ先ほどから顔を引きつらせているのかといえば、涼我と顔を合わせるのは、あの朝以来だから。
　私が泥酔してしまい、タクシーで帰りついたところを涼我に介抱してもらった例の一件だ。

「お疲れ様。涼我も来てたんだね」

　渡されたおしぼりを手に取りつつ、視線を合わせずにサラッと話しかけてみる。
　次の瞬間、蘭々ちゃんが「ビールでいいですか？」と声をかけてくれたので、笑顔を戻してうなずいた。