極上初夜は夫婦のはじまり~独占欲強めな社長ととろ甘結婚いたします~
「今ね、『小粋』にいるの。来たらたまたま涼我もいた」

 なぜそれをわざわざ樹里に報告したのか自分でもわからないけれど、隣に座る涼我をチラリと見つつ樹里の応答を待つ。

『涼我と一緒にいるのね。ちょうどよかった。電話代わって』

「え? なんで」

『いいから。話があるの』

 話があるなら涼我に直接電話すればいいのだけど、私のスマホを今そのまま渡した方が早いと判断したのだろう。
 私は「樹里」と短く言葉を発しつつ、涼我にスマホを差し出した。
 涼我も不可思議そうな表情で私からスマホを受け取り、それを耳にあてる。

「もしもし」

 涼我の声はいわゆるバリトンボイスで、褒めたくはないがセクシーだ。

「え? ……うん、来週? ……オッケー。わかった」

 一瞬、困ったように涼我の眉根が寄ったのだけど、そのまま無言でスマホを返された。
 画面を見ると、電話はすでに切れている。

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