極上初夜は夫婦のはじまり~独占欲強めな社長ととろ甘結婚いたします~
「まだ飲み足りない」

「和奏、部長の愚痴、今の今までさんざん言ったのにまだ足りないの?」

「あの部長、自分のミスを部下のせいにするなんて卑怯だよね」

 私が何気なくつぶやくと、樹里が「もうわかったから」と、あきれて笑う。

「まったく、こんな飲み方したら、かわいい顔が台無しよ」

 大人の色気をまといながら、樹里がストレートのセミロングヘアをゆるりと耳にかける。
 樹里は、顎のラインがモデルのようにシュッとしている綺麗系美人で、おまけに私より身長が十センチも高く、細身でスタイル抜群だ。

 樹里は優しいから、私のことを黒目がちで大きな瞳が愛らしいと褒めてくれるけれど、最近髪をミディアムボブの長さに切ってしまったのも一因で、背も小柄な私は実年齢よりも幼く見られる。

「美人な樹里がうらやましい」

「いやいや、私は和奏のかわいい顔の方がうらやましいけどな」

「褒め合いも楽しいね。やっぱりもう一軒行こうよ」

「ダメ。明日も仕事でしょ」

 樹里のひと言で、今日の嫌な出来事をまた思い出し、壁にもたれながらも天を仰いだ。あの部長の顔が頭をよぎり、明日も会うのかと思うと自然とため息が出る。

「……明日、会社行きたくないな。けど、行かなきゃ」

「それでよし! 今日はお開きにしよう」

 樹里が立ち上がりながら、私の髪を荒っぽくなで回す。
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