極上初夜は夫婦のはじまり~独占欲強めな社長ととろ甘結婚いたします~
 涼我の肩に蘭々ちゃんの手がかわいらしく添えられ、ふたりの顔が重なり合っている。
 私はとっさに(きびす)を返し、ギュッと目をつぶった。

 ふたりはキスしているのだから、邪魔をしてはいけない。
 なにも見ていないとばかりに、そっとその場を後にしたが、このまま部屋に戻れば樹里が不思議がるから戻れない。

 仕方なく旅館の中にある小さな中庭に出て、外の空気を吸った。
 どうして私がコソコソしないといけないのか。
 そうは思うものの、驚きすぎて未だに心臓がバクバクとうるさく騒いでいる。

 人気(ひとけ)がないとはいえ、誰が通るかもわからない場所でキスとは、なんてものを見せつけてくれるのだ。
 大きく深呼吸を繰り返していると、鼓動がゆっくりと正常に戻っていく。

 蘭々ちゃんと涼我はうまくいったのだ。
 ふたりの心の距離が縮まって、自然と付き合うことになり、キスを交わした。おそらくそうなのだろうと容易に想像がつく。
 子供の頃からの長い付き合いだからといって、蘭々ちゃんの前ではもう涼我に馴れ馴れしくしてはいけないのだなと、少し寂しくなった。

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