極上初夜は夫婦のはじまり~独占欲強めな社長ととろ甘結婚いたします~
 そこまでは記憶がハッキリ しているけれど、この後フラフラと店の外に出たら足もとがおぼつかない。
 そこで自分が思っている以上に酔いが回っていると自覚した。

「和奏、タクシーつかまえたよ。それと、涼我(りょうが)に電話しといたから」

「え?」

 聞き直す暇もなく、乗り込んだタクシーのドアがバタンと閉まる。
 自宅マンションの住所は樹里が運転手さんに伝えてくれたようで、すぐにタクシーが発進した。

 なんかよくわからないけど……もうなんでもいいや。
 思考回路がまったく働かないどころか眠気が来てしまい、体はふわりふわりとした感覚で、記憶が飛び飛びの状態だ。

「お客さん、着きましたよ」

 まどろみの中で運転手さんに声をかけられ、ぼんやりとしながらも代金を支払った。
 タクシーが私を降ろした後、グレーのパーカーにダメージジーンズという出で立ちの男性が小走りでこちらに近寄ってくる。
 樹里よりももっと身長が高くて細マッチョで、緩いパーマがかかった黒髪と精悍(せいかん)に男らしく上がった眉が印象的な、私が昔からよく知る人物だ。

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