極上初夜は夫婦のはじまり~独占欲強めな社長ととろ甘結婚いたします~
「許してほしかったら、俺の料理を食べるんだな」

「…………」

 食べたら帰っていいのだろうか。
 食べなければ帰してもらえないのだろうか。

 私は震える手でスプーンを握り直し、目の前の料理を頬張った。
 三浦さんに許してほしいわけではない。誤解されていようがいまいが、もうどうでもいい。
 三浦さんのテリトリーであるこの場から一刻も早く逃げたいのなら、この海老料理を食べるしかない。

 早く食べて、ご馳走様でしたと言ってここから立ち去り、家に帰ってから海老は吐き出せばいい。
 思考を巡らせながら、三浦さんの方はいっさい見ずに一心不乱に胃の中へ流し込む。
 喉の奥がカッと熱くなってきた頃、なんとか食べ終えた。

「すみません。今日はもう帰ります。ご馳走様でした」

「和奏ちゃん、顔色が悪いね。体調不良かな。お大事にね」

 ニヤリと笑った三浦さんの様子から、私は確信した。
 海老料理はわざとだったのだ。私に海老アレルギーがあるとハッキリ覚えていて、あえて私に食べさせた。

 これはきっと、三浦さんが私に科した罰なのだろう。実際は誤解だけれど、二股した私へ仕返ししたのだ。
 帰り道でタクシーを拾い、車内でそんな想像をして怖くなる。


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