極上初夜は夫婦のはじまり~独占欲強めな社長ととろ甘結婚いたします~
「わかんない。お父さんとお母さん、けんかはしてなかったけど、仮面夫婦だったんだって。もう夫婦でいたくないから離婚するって、お母さん言ってた」

「なんだそれ」

「私の受験が終わるのを待ってたみたい」

 どうやら離婚は計画的らしい。
 和奏はちょうど推薦入試に合格して、行く大学が決まったところだった。
 なにかがあって衝動的に離婚に至ったわけではなく、和奏の受験を考慮してタイミングを見計らっていたのだ。

「お父さんもお母さんも好きにしたらいいよ。離婚だなんて勝手に決めて。一瞬にして家庭崩壊だよ。もう知らない」

 それぞれ勝手にすればいい、と和奏が悲嘆に暮れる。

「和奏……」

 和奏はひとりっ子で兄弟はいないから、両親の離婚を一緒に考えたり不安な気持ちを分かち合ったりできる人間がいないのだろう。

「自暴自棄になるなよ。俺も和奏も、人生はこれからだろ」

 気がついたら、無意識に和奏を抱きしめていた。
 和奏も抵抗せず、俺の胸でグズグズとしゃくり上げるように泣いている。

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