極上初夜は夫婦のはじまり~独占欲強めな社長ととろ甘結婚いたします~
「俺に媚びてきたから、ちょっと遊んでやろうと思ったけどやめだ!」
酔っているのではないだろうかと思うほど、三浦さんがイラついた大声を出して私たちに背を向けた。
「待てよ!」
もうそのまま立ち去ってくれてよかったのに、涼我がわざわざ三浦さんを呼び止めた。
「最後に、和奏に謝れ」
「は?」
「妻子がいたのを隠していたこと、わざと海老を食べさせたこと、このふたつに関してはちゃんと謝れよ!」
いつまでも背に隠れてはいられなくて、両手で涼我の腕を持って引き止める。
「もういいから」と涼我に訴えたけれど、涼我は「よくない!」とガンとして譲らない。
せっかく暴力沙汰にならずに済みそうなのに、そんな要求をしなくても、と私はヒヤヒヤだ。
「和奏ちゃん、悪かったね」
私の心配をよそに、意外にも三浦さんは謝罪してくれた。
逆にそれに驚いて、私はその場でフリーズしてしまう。
「もういいだろ。これ以上俺を調べたり、ストーカーしたりするのはやめてくれよ。いい迷惑だ」
触れていた涼我の腕に力がこもるのがわかって、再びそれを宥めた。
嫌な言い方だったし、納得がいかない気持ちは理解できるけれど、これ以上の言い争いは不毛だ。
三浦さんが今度こそ私たちに背を向けて去っていく。
それを見ながら涼我が、「どっちがストーカーだ。ふざけるな!」と怒りをこらえながらつぶやいた。
たしかに私が三浦さんに付きまとった覚えはいっさいないし、こうして突然押しかけられたのは私の方だ。
きっとあれがプライドの高い三浦さんの精いっぱいの捨て台詞だったのだろう。
あれで全部終わるなら、全然腹は立たないし、涙も出ない。
やっと楽になれた……そんな気がした。
「大丈夫か?」
涼我が私の腕に手を添えながら、なにもされなかったかと視線を上下にやりながら無事を確かめる。
「ありがとう。怖かった……」
涼我の広い胸板に寄りかかるように額だけを預けたのだけど、そっと体を離されてしまう。
「送っていく」
抱きしめてくれないのか、と肩透かしを食ったような気持ちになって涼我をうかがうと、自然な形で視線をはずされた。
「すぐそこだから大丈夫だよ」
「ダメだ。送る」
涼我が私の家の方角へと足を進めた。
先ほどからまともに目を合わせてはくれないし、今日の涼我はいつもと違って変だけれど、それは私と一夜を共にしたのが原因だろうか。
「あの……あのね」
ゆっくりと歩きながら隣の涼我に声をかけたものの、私は途中で言葉を引っ込めた。
どうして私を抱いたのか、その真意を聞いても私の納得する答えが返ってくるとは限らない。
性欲に支配されて理性が飛んだだけだと言われたら、さすがにショックだし、その可能性もゼロではない。
中途半端に話しかけておきながら私は無言になってしまい、妙な沈黙が流れた。
「この前は悪かった」
私のマンションの前までたどり着くと、涼我が歩みを止めて低い声でつぶやいた。
「なにそれ」
涼我にとって、あれは謝らなければいけないことだったのだろうか。
悲しい気持ちになってきてうつむくと、涼我が私の頭の上に手をのせる。
「ちゃんと戸締まりして寝ろよ。おやすみ」
涼我が来た道を戻っていき、私はその背中を見送る。
今日は結局、私たちの視線は一度もまともに合うことがなかった。
酔っているのではないだろうかと思うほど、三浦さんがイラついた大声を出して私たちに背を向けた。
「待てよ!」
もうそのまま立ち去ってくれてよかったのに、涼我がわざわざ三浦さんを呼び止めた。
「最後に、和奏に謝れ」
「は?」
「妻子がいたのを隠していたこと、わざと海老を食べさせたこと、このふたつに関してはちゃんと謝れよ!」
いつまでも背に隠れてはいられなくて、両手で涼我の腕を持って引き止める。
「もういいから」と涼我に訴えたけれど、涼我は「よくない!」とガンとして譲らない。
せっかく暴力沙汰にならずに済みそうなのに、そんな要求をしなくても、と私はヒヤヒヤだ。
「和奏ちゃん、悪かったね」
私の心配をよそに、意外にも三浦さんは謝罪してくれた。
逆にそれに驚いて、私はその場でフリーズしてしまう。
「もういいだろ。これ以上俺を調べたり、ストーカーしたりするのはやめてくれよ。いい迷惑だ」
触れていた涼我の腕に力がこもるのがわかって、再びそれを宥めた。
嫌な言い方だったし、納得がいかない気持ちは理解できるけれど、これ以上の言い争いは不毛だ。
三浦さんが今度こそ私たちに背を向けて去っていく。
それを見ながら涼我が、「どっちがストーカーだ。ふざけるな!」と怒りをこらえながらつぶやいた。
たしかに私が三浦さんに付きまとった覚えはいっさいないし、こうして突然押しかけられたのは私の方だ。
きっとあれがプライドの高い三浦さんの精いっぱいの捨て台詞だったのだろう。
あれで全部終わるなら、全然腹は立たないし、涙も出ない。
やっと楽になれた……そんな気がした。
「大丈夫か?」
涼我が私の腕に手を添えながら、なにもされなかったかと視線を上下にやりながら無事を確かめる。
「ありがとう。怖かった……」
涼我の広い胸板に寄りかかるように額だけを預けたのだけど、そっと体を離されてしまう。
「送っていく」
抱きしめてくれないのか、と肩透かしを食ったような気持ちになって涼我をうかがうと、自然な形で視線をはずされた。
「すぐそこだから大丈夫だよ」
「ダメだ。送る」
涼我が私の家の方角へと足を進めた。
先ほどからまともに目を合わせてはくれないし、今日の涼我はいつもと違って変だけれど、それは私と一夜を共にしたのが原因だろうか。
「あの……あのね」
ゆっくりと歩きながら隣の涼我に声をかけたものの、私は途中で言葉を引っ込めた。
どうして私を抱いたのか、その真意を聞いても私の納得する答えが返ってくるとは限らない。
性欲に支配されて理性が飛んだだけだと言われたら、さすがにショックだし、その可能性もゼロではない。
中途半端に話しかけておきながら私は無言になってしまい、妙な沈黙が流れた。
「この前は悪かった」
私のマンションの前までたどり着くと、涼我が歩みを止めて低い声でつぶやいた。
「なにそれ」
涼我にとって、あれは謝らなければいけないことだったのだろうか。
悲しい気持ちになってきてうつむくと、涼我が私の頭の上に手をのせる。
「ちゃんと戸締まりして寝ろよ。おやすみ」
涼我が来た道を戻っていき、私はその背中を見送る。
今日は結局、私たちの視線は一度もまともに合うことがなかった。