【短編】涙の理由を、言い訳させて。
「っ…じゃあ、わたし先帰るね!」
そう言って、カバンを勢い良く持った。
「っ…でもあゆちゃん…」
「……良かったね理希、頑張りなよ」
理希だけに聞こえる声で
嘘だらけの言葉を__
わたし、笑えるほど偽善者だね。
早くこの場から逃げたくて
そそくさと歩き始めた。
ズキズキズキ
ひねった足も痛い。
胸は、えぐられるほど痛い。
このまま、うまくいっちゃうのかな。
このまま………うまくいかないでよ。
でも、理希に嫌われない方法は
背中を押してあげることしかないの。
気持ちを伝えたら、全部崩れちゃうから。
それが、わたしの役目なんでしょ?