【短編】涙の理由を、言い訳させて。
小さい時から
彼を守るのがわたしの役目で…
『…あれ?立場、逆転してないか』って
思ったりもするけれど。
この関係は、ぜんぜん嫌いじゃない。
理希を動物に例えるとしたら
迷いなく子犬だ。
わたしの名前を呼んでは
子犬のようにしっぽを振っている。
だからなんか、目が離せない。
理希は、わたしがいないとダメだから……
わたしもずっと、隣にいたいし。
理希しかいらないから。
それなのに、
なのに……
「あゆちゃん。
僕さ、気になる子…できたかも」
__いつもの帰り道。
理希は頬をかきながら
そんなことをわたしに言った。
「っえ?」
思わず笑いながら、聞き返してしまった。
……人間って不思議だ。
面白くないのに、笑っちゃうのね。