【短】桜の下、15歳。
……先輩。
*
「せんぱーい!山崎先輩っ」
「……よう」
あの恥ずかしい出会いをきっかけに、私と山崎優(やまざき ゆう)先輩は、学校内で会えば話をするようになった。
先輩は、ひとつ上の2年生。
主に、私が2年の階に行っては、一方的に話をしているような状態で。
だけど、嫌そうな表情は少しも見せない。
私が、先輩に恋をするのに、時間はかからなかった。
少しは、仲良くなってるかなって……勘違いじゃないといいな。
先輩は、よく廊下の窓際にいる。
だから、見つけやすいし、声もかけやすい。
そして、たまに、窓の外を見つめて、切なそうに目を細める。
入学式の時に満開だった桜の花びらは、今はほとんど散っていた。
この目をする時、先輩は私がそばにいることなんて、きっと忘れているから、寂しくなる。
出会った日も桜のそばにいたし、桜がすっごい好きなんだろうなって思うけど……。