【短】桜の下、15歳。




先輩は、また桜の木の下にいた。

散りかけて、もう花びらよりも緑の葉がほとんどを占めているその木を、見つめながら。


――『去年、うちの女子生徒がひとり、事故で亡くなったの知らない?』


今日は、風が強い。


――『山野さくら。優とすっげー仲良くてさ』


私は、校舎を飛び出した。


――『いやいや、違うよ、彼女とかじゃなかったんだけど。親友みたいな感じかな。あの時、あいつやばくて。学校もほとんど来れなかったんだ』


先輩は、今日も桜の下にいる。

愛おしそうに……、愛しい人を瞳に映すように。


――『ノート?ああ……あれは、さくらちゃんに最後に貸してたノート。ずっと持ってるよな、あいつ。貸したその日に、亡くなったから……』
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