【短】桜の下、15歳。
「先輩が好きなのは、桜の木ですか?」


風が強く吹いて、自分の髪の毛が視界を隠す。


涙が、横に流れた。


「山野さくらさん……ですか?」


先輩が目を見開くのは、私が泣いているからなのか。

私の口から、彼女の名前が出たからなのか。

私には、分からない。


先輩は困ったように目を細め、笑った。


「……内緒な?」


パラパラとノートがめくれる。

白紙のページが続き、最後のページが現れる。

控えめに、小さな丸い文字で綴られた想い。


『優が好きだよ』


END
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