夏空と、ボールと、君と。
熱中症防止の氷を配り終えて次の仕事。


途端、相手高校の歓声が球場内に響いた。


私は反射的にスコアボードに目をやる。


相手校に1点先取されていた。

相手校は甲子園に何回も出場しているいわゆる強豪校。

でも…まだ、巻き返しがきく。


ここからだ。ここからが本当の勝負。









…ガシャン!


試合に見入ってしまったせいか、持っていたカゴを落としてしまった。



「ん。」

近くにいた男子生徒がカゴを拾ってくれた。



「すみません、ありがとうございます。」


「いや、いいよ。…ねぇそれよりもさ、あんたって野球マネだよね?」


「は、はい。」


「んじゃ、せっかく部員達が活躍してるんだ。この仕事は俺ら生徒会に任せて、応援に混ざってきなよ。3年は今年で最後なんだから。」

「え、でも…」

声をかけてくれたのは生徒会役員の方だった。確かに試合を見たい気持ちは山々だけど…

昨日、七宮くんにマネの仕事で一緒に戦うって宣言したし…。


「いいのいいの。元は人手不足で生徒会が無理やり押し付けた仕事だし…。行ってきなって。」


…なんて、優しい人なんだろう。


「ありがとうございます‼︎応援、精一杯頑張ります!」



こうして私は野球部のスタンドへ向かった。


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