Black sweet Darling!《完》
辺りにブルーマウンテンのいい香りが立ち込め、嗅ぎ慣れた香りなのにやっぱり好きだなと思う。


「お前さ、俺の事知らなかったんだろ?」


カウンターに肘をつきこちらを見上げる男。

はい、全く知りませんでしたよ、と言いたいところだけど。


「A'zカンパニーの社長でいらっしゃいますよね?」


カップにコーヒーを注ぎながら答える。

昨日得た知識だと、いくつものビルや商業施設の運営をしてる結構な大企業だ。


「へー、知ってるんだ?じゃあ名前は?」


名前…?

えーと…マコちゃん言ってたっけ…?


考えてみるけど出て来ない。

どう頑張っても、あたしの引き出しには彼が社長だって情報しか入っていないのだ。


「ふっ、やっぱ知らなかったんじゃねぇか。」


全員が全員知ってると思うなっての。
経済誌なんて読まないもん。

とは言い訳で、無知な自分が少し恥ずかしい。



「すみません。興味がなかったもので。」


経済情報に、のつもりでポロリと着いて出た言葉。

言ってからしまった、と思い目の前の男の方を見る。

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