Black sweet Darling!《完》
「店長さんいますか?」
朝のラッシュが終わり、お客様もまばらになって来た頃、ヨージさん宛に来客があった。
最近頻繁にやって来る人達だ。
「生憎本日お休みを頂いてまして。」
ヨージさんに代わりあたしが対応をする。
他のお客様に邪魔にならないよう、端の席に案内する。
「そうですか。浅里さんは例の話聞いてらっしゃいますか?」
「ああ…はい…何となくは。」
黒のスーツの男は、30代半ばという所だろう。
もう1人も同じ頃の男性だと思うけどこっちはあまり話さない。
彼らはこのビルのオーナーの秘書。
そして例の話とは、この店…loopに立ち退いてくれと言う話だ。
半年ほど前からヨージさん宛に訪ねて来ては、その交渉をしている。
もちろんヨージさんは毎回断っているのだけど、彼らが諦めないのだ。
「この話を受けて頂いたら、現従業員の皆様を好待遇で引き受けようと言っているのですよ。
なのに中々うんと言っていただけなくて。」
彼らはloopのような老舗カフェではなく、海外の大型チェーンのカフェをテナントに迎えたいのである。
その方が回転率も良く、集客も見込め、売上も上がると言うのが彼らの言い分である。