Black sweet Darling!《完》
確かにそれは正論なのかもしれない。

けれど。

そう言うカフェばかりではなく、うちみたいな老舗の、常連さんが集うようなカフェもあっていいんじゃないか…と言うのがヨージさんの意見であり、もちろんあたしもそれに賛成している。


「うちは、常連さんもたくさんいますし、無くなったら寂しいとおっしゃってくださる方もたくさんいるんです…」


崎田さんを含め、いろんな人の顔が頭をよぎる。
みんなの憩いの場を守りたい。


「浅里さん。うちも慈善事業でビル経営をしているわけではないんです。
そう言う類のことは、小さな喫茶店に任せればいい話ですし、時代は変わっていってるんですよ?」


丁寧な口調だけれど、とても冷たくて怖い。

どう言おうか考えているあたしを余所に、秘書は続ける。


「とにかく。今日はこの店を続ける条件をお伝えしに来ました。」

「条件…?」


目の前に一枚の用紙を出され、それを受け取る。

これって…


「一ヶ月で売上を30%伸ばしてください。それを達成できるのであれば、今後もお付き合いさせて頂きたいと社長は申しております。」


「さ、30%…!?」


ざっと計算してみるけど、そんな金額を売り上げた月はあたしの記憶では一度もない。


「あなたも今より給料が良くなるんだ、どっちが賢明か考えた方がいい。」


呆然と用紙を見つめるあたしに、秘書はそう言い放ち店から出て行った。
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