俺様Dr.に愛されすぎて
1.傘の下から恋は始まる
4月の青い空に白い雲が浮かぶ、よく晴れた春の日。
今日も東京・池袋の端にある、大きなオフィスビルの5階、【株式会社 新和メディカル】と書かれたフロアで私はヒールを鳴らして走る。
「じゃあ、営業行ってきます!夕方には戻ります」
資料などの荷物をいっぱい詰め込んだバッグを手に、オフィスの社員へ声をかけると、「いってらっしゃい」と数名の声が返ってきた。
それを聞きながら建物を出ると、ビルの近くの駐車場に停めてある社名が書かれた軽自動車に乗り込んだ。
「資料よし、発注書よし、身なりも完璧。よし、今日は当麻総合病院からだ」
ひとつに束ねたストレートの黒髪と、シンプルなメイクの顔をミラーで確認する。
そしてエンジンをかけると、慣れた手つきで車を発車させた。
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