俺様Dr.に愛されすぎて
40分ほど車を走らせ、当麻総合病院に着く頃には空はさらにどんよりとした雨雲で覆われていた。
雨ふりそう……あ、まずい。会社に傘忘れてきた。
こんな日に限って関係者用の駐車場はいっぱいで、車を建物からだいぶ離れた位置に停めるしかないし。雨が降る前に早く済ませよう。
そう思い、小走りで病院内へと駆け込んで行く。
相変わらず患者さんが多い院内を早足で抜けて、事務局へ書類を届ける。
そして建物を出ようと出入り口へ向かっていると、たまたま歩いていた宮脇さんと出くわした。
「あら、藤谷さん。今日巡回日だっけ?」
「お疲れ様です。いえ、こちらの事務局におつかいに」
答えると、宮脇さんは「大変ねぇ」と目尻にシワを寄せて笑う。
「でも残念。真木先生昨日夜勤で、さっきあがっちゃったのよ~」
「いや、全く残念じゃないですけど」
すかさず出される『真木先生』の話題に冷ややかに否定すると、その反応が分かっていたかのように宮脇さんは笑いながらその場をあとにした。
もう、また宮脇さんってば……。
別に私は真木先生に会うために来てるわけじゃないし。
そう思いながら、5センチヒールのパンプスをコツコツ鳴らし、再び院内を歩き出す。