俺様Dr.に愛されすぎて
その先生はきっと、ちゃんとわかってた。
それまで真木先生が、どれほど悲しい気持ちを抱えていたのか。
どれほど我慢をかさねていたのか。
自分の気持ちを理解して、泣いてくれる人なんてきっとそんなに沢山はいない。
それほどまでに、先生は、真木先生を思っていたんだ。
そんな先生に憧れて彼もお医者さんを志したのだろうことは、彼がそれ以上言葉にしなくとも察することができた。
「その先生に憧れて、真木先生もお医者さんになったんですね」
「あぁ。けど医者って仕事は、なるまでも大変だけどなってからもしんどいことが多くて」
しんどいこと……?
それって、と彼を見つめて言葉の続きを待つ。
「医師として当麻に赴任したての頃、俺は病棟の担当だったんだ。そこで、ひとりの入院患者と仲良くなってさ。その人俺の死んだばあちゃんそっくりで、その人も俺に孫みたいに接してくれて」
初めて聞く、彼の以前の話。
入院患者、ということは毎日のように顔を合わせ親しくもなるだろう。
自分が主治医という存在に救われた彼なら尚更。今度は自分が、患者さんの心に寄り添える存在になりたいと願うだろう。
「けど、その人は治療の甲斐なく亡くなった。……まるで、ばあちゃんを二度亡くした気分だった」
ぼそ、とつぶやくように言った言葉に、足元の花壇に咲く鮮やかな紫色の花が揺れた。